ひとりぐらしの高校生①
高校生のとき、私は一人暮らしだった。
やや特殊な学校で、実家が遠方だったりしてわざわざ一人暮らしをしながら通っている子が私を含め何人かいた。
お弁当なんて作るの面倒だったから、いつもお昼ごはんは買い食いをしていた。
その頃私はあまり友達がいなくて、いつも一人でお昼を食べていた。そんな中、特別仲がいいわけじゃなかったけど、私を気にしてくれてた女の子がいた。
その子はその子のお母さんに頼んで、そんなに仲良くもない私のためにお弁当を作ってもらってくれた。一緒にお昼を食べるわけではなかった。
いつも私の分もお弁当を持ってきてくれた。そして彼女は少し離れた席に戻って自分の分を食べていた。
私もいつもひとりだったが、
彼女もいつもひとりだった。
私はお礼こそ言うものの、何も返せるものがなくて、いつも申し訳なさでいっぱいだった。
「いいのいいの!遠慮しないで」
そう言って、彼女は毎日持ってきてくれた。
その優しさに、どう応えたらいいかわからなかった。
その時の私は、人に優しくされるときはそれなりの対価を払わなくてはいけないと思っていたんだ。
材料費払うのもおこがましく思えたし、
家に遊びに行くような仲でもなく、直接その子のお母さんにお礼も言えない。
ただ「ありがとう」「ありがとうとお母さんにも伝えて」と言うことしかできなくて。
その子とそれ以上仲良くなれない自分に対して嫌悪感を感じていたりもした。私も彼女もお互いひとりなのに、どうして一緒に食べようとしなかったんだろう。思春期って不思議だ。
他にも一人暮らしの子は何人かいたけど、私にだけお弁当を持ってきてくれた。
初めは意味がわからなかった。
だって、その子にとっても、そのお母さんにとってもメリットなんてないから。材料費も手間もかかるだろうし、私はその子の特別仲がいい友達でもない。
見返りを求めない厚意を受けたのは、親以外では初めてで、本当にどうしていいか分からなかった。
寂しいときは、涙を堪えてお弁当を食べる時もあった。あのときの私は本当にしょうもない根暗だった。
クラス替えをしてすっかり疎遠になってしまい、あの時言った「ありがとう」以上のお礼は結局できずに卒業してしまった。